[iGEM Japan チーム紹介] GIFU
本記事では、日本のiGEMチームととして、2014年に岐阜大学を主体として誕生した、 iGEM GIFUチームについて紹介していきます。 彼らは、iGEM 2021には2年ぶりの参加となりますが、日々どのような活動をおこなっているのか、どのようなテーマで挑むのかなどについて紹介していきます。
目次
1. これまでの iGEM GIFU
iGEM GIFU は 2014 年から iGEM に参加し、一昨年の 2019 年大会まで毎年参加してきました。一昨年には、線状であるメッセンジャー RNA(mRNA)を酵素によって環状化した環状 RNA から機能性タンパク質を効率的に合成するといったテーマを掲げ研究活動を行いました。この研究では RNA の環状化には成功したものの、残念ながら機能性タンパク質の合成は達成できませんでした。
2. 今年の目標
2.1 概要
疲労や身体的、肉体的な負荷によってヒトが感じるストレスは社会的な問題となっています。特に慢性的なストレスはうつ病や自殺の原因となるなど深刻であり、自身にストレスが蓄積していることを早期に自覚することがそれらの予防に繋がります。しかし、健康診断などの検査によってストレスの蓄積を早期に診断することは難しく、体に異常を感じることで初めて慢性的なストレスを自覚するといったことが少なくありません。そこで、我々はストレスによってヒトの体に生じる微小な変化を合成生物学の力を利用して定量することを目標にしています。
ストレスによって体内で起きる変化をバイオマーカーとしてストレスの定量やうつ病診断に活用しようといった試みはこれまでにもあり、唾液中の α-アミラーゼ濃度の変化や、ホルモンであるコルチゾールの分泌量を測定することによってストレスの蓄積を調べるといった研究が行われています。幣チームでは唾液中に存在するヒトヘルペスウイルス 6(HHV-6)を標的として定量することで、ストレスの定量を行います。
2.2 利用するツール
これらの問題解決のために我々が利用する合成生物学のツールは主に二つです。
2.2.1 Toehold Switch
Toehold Switch はタンパク質の設計図であるメッセンジャー RNA(mRNA)の立体構造の変化を利用した翻訳調節機構です。この機構では目的のタンパク質を合成する ON の状態と、タンパク質を合成しない OFF の状態に調節することができます。これはトリガー RNA と呼ばれる、mRNA とは異なる RNA が Toehold Switch の調節部位に結合するか否かによって ON/OFF が切り替わります。トリガー RNA が Toehold Switch に結合すれば ON の状態に、結合しなければ OFF の状態になります。私たちはこの Switch を HHV-6 由来のトリガー RNA で ON になるように設計することで、HHV-6 が存在するとレポーターとなるタンパク質が合成される回路を組み立てていきます。このタンパク質を定量することによって、HHV-6 の存在量を測定します。
2.2.2 ・Cell-free system

HHV-6 は遺伝情報として DNA を保持しているため、Toehold Switch を利用するためには HHV-6 のゲノム DNA からトリガー RNA を転写する必要があります。また、Toehold Switch を含んだ mRNA からレポーターとなるタンパク質を合成することも必須です。私たちはこれを Cell-free system を用いて行います。
前述した方法は大腸菌などの細胞の中で行うことは理論上可能ですが、いくつかの問題を伴います。例えば、標的となるウイルスを細胞内まで輸送することが難しい、トリガーRNAやレポータータンパク質が細胞内で分解を受けるといったものもその一つといえるでしょう。私たちが利用するCell-free systemは細胞の基本的な構成要素である膜などを必要とすることなく、転写・翻訳に必須なコンポーネントのみを揃えており、これらの問題を解決する手段となります。さらに我々は本来PCRやLAMPによって行われる標的配列の増幅を酵素による反応として(ヘリカーゼ依存性増幅:helicase depnedent amplificacion)Cell-free systemに組み込むことで、操作が簡単で従来のRT-qPCRより迅速な定量方法としての確立を図ります。
3. リーダーからひとこと
軸となる活動は研究ですが、その他にも HTML などを使った Web ページの製作や数理モデリング、クラウドファンディング、企業に向けた PR などさまざまなことが体験できます!すこしでも興味のある方は DM またはメールにてご連絡ください!(iGEM GIFU リーダー 五十川)
4. HP、 SNS へのリンク等 問い合わせ先
幣チームへのお問い合わせは Twitter の DM、またはホームページのお問い合わせに記載したメールアドレスよりお願いします。
まとめ
皆さん、GIFU チームの魅力は知っていただけましたでしょうか?
引き続き、彼らの今後の活躍に注目していきたいと思います。彼らの活動を応援したい・一緒に何かをやりたいと思った方は、彼らの HP や SNS をフォローしたり、コンタクトをとってみましょう。
また、オリジナルの LINE スタンプがリリースされました。 この機会に、オリジナル LINE スタンプを買って、iGEM Gifu チームを応援しましょう!

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