iGEM 高校生年代で最強を誇る LINKS-Chinaとは (2018, 19, 21優勝)
iGEM High school section (高校生年代) には、大学生チームも実力で凌駕する圧倒的な集団が存在します。 それは、Boxiang Wang さん 率いる LINKS-Chinaです。彼ら(母体チームも含む)は、高校生年代で圧倒的な実力を示し、iGEM 2018、 IGEM 2019、iGEM2021大会で優勝を果たしています。
本記事では、彼らのここ数年のメインプロジェクトを振り返りたいと思います。
目次
最強チームを率いる PI
これらのチームの中心にいるのは、PI である Boxiang Wang さんです。 彼は、記録によると、iGEM 2012 WHU-China チーム、iGEM 2013 Shenzhen_BGIC_ATCG チームの 1 プレイヤーとして参加しています。
その後、iGEM 2014からは、高校生チームを中心に、BGI colleageの組織の一員として数多くのチームをサポートしています。 特に年に2チーム程度コンスタントに支援を行なっています。
その後、2018年には、現在中国最大の合成生物学スタートアップのBluephaの共同創業者 & CTOであり、数々のiGEMプロジェクトに貢献してきたiGEMer alumniのHaoqian M. Zhangさんが率いる Bluepha labで活動を行います。 そのような中、Bluepha labが支援し、Boxiang Wang さんが、実質的な指導を行なったと考えられるチームが、iGEM史上歴代最高とも言える成績を出しました。それが、iGEM 2018 GreatBay_China チームです。(Grand Prize、7つのBest賞、3つのBest賞ノミネート。簡単にいうとほぼ全部の賞を総なめしています。)
その後、Boxiang Wang さんは、合成生物学スタートアップ 灵蛛科技 (LINK SPIDER) を創業しています。 この会社では、合成生物学分野における技術開発から製品化までを行うと同時に、iGEMへの参加を中心とした教育事業も行なっています。(特に、iGEM 2019 GreatBay_SZとiGEM 2021 LINKS_Chinaのプロジェクトがプロダクト化されています。)
そのような教育事業を通じて、毎年数チーム、iGEMチームをサポートしています。特に、力を入れていると考えられるチームが、毎年1チーム存在します。 本記事では、そのチームについて、取り上げたいと思います。
紹介チーム
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iGEM 2018 GreatBay_China (Grand Prize)
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iGEM 2019 GreatBay_SZ (Grand Prize)
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iGEM 2020 LINKS_China
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iGEM 2021 LINKS_China (Grand Prize)
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iGEM 2022 LINKS_China
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iGEM 2023 LINKS_China
※ 今回紹介するチームは、Bluepha labもしくは、LINKS labで実験をしています。それらのラボでは、2018年以降、いくつものチームが出場しています。
関連チームを見ると、PIのみならず、インストラクターについても、何年も同じ人がいたり、チーム分担を交代していることから、強い支援コミュニティが構成されていることが想定されています。
(iGEM 2020 Greatbay_SCIE (First Runner Up)も、Bluepha labチーム。今回紹介するチームの関連チームによってサポートされています。)
彼らのチームの強みは、iGEMを完全に理解したパーツをベースとした尋常じゃない実験量と結果です。(高校生、大学生を含めた全カテゴリーでトップでもおかしくないレベルです。)。 内容は、先行研究があるものが多いように見えます。既存の結果を着実に積み重ねながら、最後の部分でオリジナリティを出しています。 オリジナリティの部分が、良い感じにJudgeに伝わった時には、優勝しています。
一方で、ストーリーテリングや、社会活動などは弱いです。また、プレゼンやWikiは、(基準値以上ではありますが) 最高クオリティではありません。 新しいiGEMの審査形式に対応する気はあるようですが、あくまで実験にこだわるチームだと感じます。 みんなの憧れのスタイルのチームの一つです。(なので、今後は、より賞を取れなくなってくる可能性は高いです。)
(本記事では取り上げませんが) 高校生年代には、このグループと双璧をなすチームが存在します。LambertGAです。 彼らは、LINKS-Chinaの圧倒的な実験量と質のスタイルとは異なり、プロジェクトの完成度を重視したチームです。 彼らのWikiやプレゼンは、一つの芸術作品のように、美しいです。
iGEM 2018 GreatBay_China (Grand Prize)
概要
mCATNIP: microbial Compartmentalization AssisTed Nepetalactol Ingredient Production
ネペタラクトンは、イヌハッカの有効成分であり、ネコ科の誘引物質であり、環境に優しい殺虫剤の可能性があります。 これは、ビンクリスチン (抗がん剤) など、治療上の価値が高い他の植物由来の化合物と共通の前駆体であるネペタラクトールを持っています。 私たちは、大腸菌と酵母の共培養によってネペタラクトールを合成することを目指しています。 この場合、大腸菌は中間体ゲラニオールを生成し、酵母はゲラニオールからネペタラクトールへの変換を続けます。 シャント生成物を減らすために、酵母の内因性遺伝子が削除されます。 さらに、我々は、大腸菌における異種遺伝子発現を調節するための転写活性化因子様エフェクター(TALE)安定化プロモーターのライブラリーを設計、特徴付け、使用しています。 私たちの応用設計は、ネペタラクトンを野良猫の駆除に将来応用することを想定しており、これを国民の関与と教育の機会と考えています。(Google 翻訳)
背景 & スケジュール
2018 年 2 月に冬季授業、ブレスト開始。3 月からプロジェクトスタート。4 月からラボスタート。(@Bluepha lab)
プロジェクト背景は次の通りです。
マタタビに関するプロジェクトを行うという最初のアイデアは、アドバイザー Boxiang Wang から来ました。 彼は、マタタビが緑色の殺虫剤として使用できるという事実について私たちに話してくれました。 Alexis Zeng (リーダー)氏はさらに研究を進め、製造に共培養システムを使用できる可能性を見出しました。 ルシンダ・リン博士 (PI) は、私たちの主任研究者である微生物生産を最適化する戦略を模索しました。 Haoqian Zhang (PI) は、TALE 安定化プロモーターの使用を推奨しました。(Google 翻訳)
やったこと
主にやったことは、次のことです。
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✓ Geraniol production by E. coli
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✓ Conversion of geraniol to nepetalactol by S. cerevisiae
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✓ Creating a stable microbial consortium of E. coli and S. cerevisiae
炭素源から Geraniol (Nepetalactolの前駆体) に変換 (大腸菌) → 成功
転写活性化因子様エフェクター安定化プロモーター (TALE sp) ファミリーのライブラリ作成 → 関係性を理解できるレベルまで実験
さらに色々検証して、プロモーターとゲラニオール生産量の関連を可視化した。
Geraniol から Nepetalactol に変換 (酵母) → 成功
E. coli (大腸菌) と S. cerevisiae (酵母)の共培養で、炭素源から Nepetalactol を生産する → 失敗
共培養を行なったが、大腸菌と酵母の両方で安定的な培養ができる条件を決定できなかった。 いくつかの培地条件を検討し、FACS 等で細胞数を確認した。一応の方向性の提案はしている。
結果
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GRAND PRIZE !
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Medal : Gold
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Best : Wiki, Poster, Model, New Composite Part, Part Collection, Product Design, New Basic Part
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Nomination : Presentation, Integrated Human Practices, Education & Public Engagement
感想
この実験量と質は、すごいと思います。この戦略は、配列設計段階からルールを熟知していないと計画できないものです。
55個のパーツを作成し評価 (19 個の複合パーツと 36 個の基本パーツ)しています。 TALE sp ファミリー関連で、best composite part、best part collectionを、GPP→ geraniolのパーツでbest basic partを獲得しています。
また、Wikiのデザインも構成も良く、読みやすいです。 歴代最高レベルに賞を獲得した理由がよくわかるプロジェクトでした。
iGEM 2019 GreatBay_SZ (Grand Prize)
概要
SPIDroin EngineeRing with chroMoprotein And Natural dyes クモの糸は、医薬品、布地、航空宇宙分野で応用できる優れた特性を備えた新素材です。 ただし、クモの行動は激しいため、クモの繁殖は適用されません。 現在のアプローチは、他のシャーシから組換えスピドロイン (シルクタンパク質) を生成し、それらをシルクに紡ぎ出すことです。 今年は、大腸菌を使った組換えクモの糸の製造と、その糸を着色して布地産業に応用することを目指しています。 私たちは、スピドロインの 3 つの重要なドメイン (N 末端、反復領域、C 末端) をモジュール化し、それらをさまざまなスピドロインに組み込み、シルクを形成しました。 次に、そのシルクを微生物の天然色素であるデオキシビオラセインとインディゴで染めました。 より良い色とより便利な染色プロセスを得るために、反復領域を色素タンパク質に融合し、紡糸中にそれらをスピドロインと混合しました。 私たちのチームは、布生産のための新しいアプローチを提供し、クモの糸の用途の新たな可能性を探求したいと考えています。 (Google 翻訳)
スケジュール
(未記載のため推測)2018 年と同様。 (2 月に冬季授業、ブレスト開始。3 月からプロジェクトスタート。4 月からラボスタート。6 月から本実験。)
GreatBay_SCIE チームと Genas_China チームと共同でラボを使用。( @ Bluepha lab? )
やったこと
主にやったことは、次のことです。
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✓ クモの糸のタンパク質をベースとした糸の生産
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✓ 系の多色染色
クモの糸の生産 → 成功
実際の抽出・紡績状態を加味しながら、パーツを設計。バッファーを工夫することで、クモの糸の成分の安定的な抽出に成功。 ハードウェアも設計し、紡績を行い、20mの糸を作成することに成功。 (あとは、これを作る過程で、色々なバージョンのクモの糸のパーツを作成した。)
クモの糸の生産 → 成功
実際の抽出・紡績状態を加味しながら、パーツを設計。バッファーを工夫することで、クモの糸の成分の安定的な抽出に成功。 ハードウェアも設計し、紡績を行い、20mの糸を作成することに成功。 (あとは、これを作る過程で、色々なバージョンのクモの糸のパーツを作成した。)
デオイビオラセイン (赤紫色) とインディゴ (青色) の生産と染色 → 成功
クモの糸のタンパク質そのものに蛍光タンパク質をつける → 成功
結果
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GRAND PRIZE !
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Medal : Gold
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Best : Hardware, New Basic Part, Best Part Collection, Presentation, Wiki, iGEMers' Prize
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Nomination : Education and Public Engagement, Integrated Human Practices, Measurement, Model, New Composite Part, Poster
感想
今も語り継がれるiGEMでの伝説のプロジェクトの一つ、SPIDERMAN。(私は、調査前には、高校年代のプロジェクトは、これしか知らなかったです。) シンプルでわかりやすいテーマについて、膨大な実験量と完成度の両方を達成したプロジェクトだと思います。
しかし、2018 年に比べて、Wiki の読みやすさは、半減しました。さらに、随所に、時間が足りなくて書けていないような痕跡が見られました。 それでも、Best Wiki を獲得したことが、その後に大きな悪影響を与えていると言わざるおえません。このプロジェクトは、それほどまでに、大きな成功でした。
コラム クモの糸の産業化の世界トップランナーは、日本の Spibar 社です。 2023 年 9 月には、10 数年の時を経て、ついにエントリーモデルを販売開始しました。 ( 一着 10 万円 から ... (かなり改善しても)水に弱くて、染色も困難であるとのことでした。産業化はとても大変!)
iGEM 2020 LINKS_China
概要
PICACHU: PIlin Constructed nAnowires production CHassis Unlocking 電子伝導性線毛(e-pili)は、微生物によって生成される電気伝導材料であり、湿潤環境下で電気を生成することが証明されています。 最近、さまざまなエピリスが発見されましたが、厳しい栽培条件と生物学的安全性への懸念から、大規模生産には適していません。 今年、LINKS_China は、さまざまな e-pilis を表現する大腸菌シャーシである PICACHU を設計しました。 線毛構築のための 12 個の遺伝子からなる線毛ジェネレーターを作製し、3 つの線毛を発現させ、線毛の生成を検証するための新しい測定値を作成しました。 さらに、発電機を改修し、細胞の生育条件を最適化することで収量を向上させます。 最終的に、私たちは e-pilis 製品をナノワイヤ電池に変換し、持続可能なクリーン エネルギーを提供できると期待しています。 私たちは、PICACHU を渡り鳥の追跡、湿地の監視、海洋のゴミの流れの追跡などに応用することを目指しています。 将来的には、e-pili アプリケーションのさらなる可能性が探求されることが期待されます。(Google 翻訳)
背景
COVID-19の影響が多く存在した。アメリカ在住メンバーが多く参加するも、中国に帰ってこれず、限られたメンバーで実験を行なった。 ( @ LINKS lab )
やったこと
主にやったことは、次のことです。
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✓ 1. Production of e-pili in Escherichia Coli
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✓ 2. Expression of different types of e-pilis and their functional analysis
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△ 3. Pili Yield Analysis?
さまざまな種類の線毛 (e-pill) の発現・抽出 → 成功
- プラスミドを作成
まずはとても長いパーツからなる線毛生産のためのプラスミドを作成。既知の情報から、効率が期待される、いくつかの点変異などを加えたバージョンも作成。
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発現と抽出
Fig.3.3 - 発現と抽出 (iGEM 2020 LINKS_China より引用)
線毛 (e-pill) の 機能解析 → 成功
取得できた e-pill に電気を流して、電池性能を確認できた。
収量の拡大に向けた努力
- 線毛収量分析
線毛収量の収量を改善したいが、線毛の精製と抽出には通常 1 ~ 2 日かかる長期間がかかるため、実験中に線毛の大幅な損失が発生する。 そのため、まずは測定方法を改善した。線毛に、Hisタグ抗体をベースに染色し、その色を測定する方法を開発した。
- 線毛収量の拡大
まず培地の条件と培養時間について検証した。低酸素環境で、48時間程度培養することで、高い線毛収量を達成できることを発見した。 その後、コドン最適化や配列にいくつかの修飾等を検討し、独立した系で検証した。(しかし、最終的な線毛収量の比較まではいけず、ここでタイムアップ)
結果
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Medal : Gold
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Best : -
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Nomination : New Basic Part, Part Collection
感想
前年のスパイダーマンの大成功を踏襲し、ピカチュウで挑戦。しかし、その作戦は失敗でした。 以後 LINKS-China は、Funny なコンセプト (中身はガチのパーツ) で発表しなくなりました。 (2019 年までは、そのような発表が許されている雰囲気がありました。2020 年以降、急速にその雰囲気は変わって行き、現在の iGEM の雰囲気になりました。)
また、アメリカの学校出身者が多いことも、判明しました。灵蛛科技 (LINK SPIDER)は、教育事業を行っており、そのプログラムに参加している学生たちが集まっているようです。 彼ら(親も)のモチベーションは、大学受験のために、良い実績を残すことにあると推測できます。
この年は TAS_TAipei が、Best New Basic Part と Best Part Collection と Best New Composite Part を 3 冠しています。 しかし、内容で、LINKS-Chinaと比較したら、流石にありえないという印象です。
TAS_TAipe と LINKS-Chinaの大きな違いは、Wiki やプレゼンの質にあると考えられます。LINKS-ChinaのWikiは、2019年以上に読みづらいですし、デザインも劣化しています。 一方で、TAS_TAipe のWikiは、かなり読みやすいです。異なるJudgeが採点するという制度面や、個人の物差しで採点するために全体の質が評価に影響することなどが、この結果に影響していると考えられます。 また、LINKS-Chinaのプロジェクトは、2019年に比べて、少し難解でした。そのため、誰もが理解できる、これといった特徴のあるパーツがないのも評価を下げる要因になったのかもしれません。
(※ 著者は、わかりやすくて、容易なプロジェクトを推奨しているわけではありません。わかりやすく説明する努力をしないと評価されないということを伝えたいです。)
参考 : https://2020.igem.org/Team:TAS_Taipei/Parts
iGEM 2021 LINKS_China (Grand Prize)
概要
NeoLeathic Age — Revolutionary Leather Substitute from Kombucha, Spider-silk, and Natural Dyes ファッション業界の活況により、皮革の需要が高まっています。 しかし、現在の工業用皮革生産は、水質汚染や動物虐待などの環境上および倫理上の問題を引き起こしています。 LINKS_China 2021 は、Komagataeibacter と Saccharomyces cerevisiae を共培養して生成されるバクテリアセルロース (BC) を使用して、持続可能で人道的な皮革代替品を作成することを目的としています。 S. cerevisiae を操作することにより、セルロース結合マトリックスと融合した人工クモ糸タンパク質のトランスジェニック発現を誘導しました。 これにより、結合時の BC 膜の引張強度と柔軟性が増加します。 さらに、遺伝子操作された S. cerevisiae が酢酸エチルを合成できるようにし、膜にフルーティーな香りを与えました。 当社のレザーに、よりファッショナブルな機能を与えるために、人工大腸菌を使用して、着色用のさまざまなジハロゲン化インジゴイド染料を合成しました。 私たちは、私たちの新しいレザーが、より人道的で環境に優しい技術を通じてファッション業界の繁栄を継続する革新的な製品となることを期待しています。(Google 翻訳)
背景 & スケジュール
アメリカ、カナダ、英国、さらには中国の他のいくつかの都市から参加。基本的には、LINKS labに集まって作業。20名程度 + 10名程度のサポートチームが支援。 2021年のプロジェクトは、ある程度学生発案であった模様。
例年同様のスケジュール。
2 月に冬季授業、ブレスト開始。3 月からプロジェクトスタート。4 月からラボスタート。6 月から本実験。( @ LINKS lab )
やったこと
主にやったことは、次のことです。
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✓ 1. Producing Bacterial Cellulose Membrane
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✓ 2. Spider Silk modification of BCM’s properties
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✓ 3. Dyeing BCM with Natural Dyes
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✓ 4. Engineering yeast to achieve modification of BCM
共培養 (Komagataeibacter and Gluconacetobacter) により、セルロース膜を作成 → 成功
いくつかの株を検証した。その後、培養期間も検証した。 2Lフラスコに、600mL培地や、倍の4Lフラスコでの発酵にも挑戦した。 写真を見る限り、すごい量のセルロース膜を取得できている。
クモの系をセルロース膜に混ぜて強度と柔軟性を向上させた → 成功
BCM に結合するセルロース結合マトリックス (CBM)と、クモの系 (2019年のプロジェクト)を融合させて、発現させた。 そして、溶解度をチェックしたあと、精製した。
精製したクモの系を、セルロース膜と混ぜて、物性試験を行った。クモの糸を混ぜると耐久性と柔らかさが上がることが確認された。
染色 → 成功
Indigo、 6, 6’-di-bromo-indigo (tyrian purple)、6, 6’-di-chloro-indigo (tyrian red) の3種類を作成して、染色した
精製したクモの系を、セルロース膜と混ぜて、物性試験を行った。クモの糸を混ぜると耐久性と柔らかさが上がることが確認された。
BCMのやわらかさを改善しようしたり、香りをつけようと途中まで実験したが、最終結果までは得られず、ここでタイムアップ。
結果
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GRAND PRIZE !
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Top 10 (2021 年より新設)
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Medal : Gold
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Best : New Composite part, Part Collection, Wiki, Supporting Entrepreneurship
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Nomination : New Basic Part, Measurement, Integrated Human Practices, Model, Hardware, Presentation
感想
復活を賭けて望んだプロジェクトだろう。環境問題に切り込むコンセプト、誰にもわかりやすいプロダクト、圧倒的な実験、改善された Wiki、それらによって、圧倒的な成果で優勝した。
基本的には、2019年のプロジェクトの路線を継承でした。 オリジナリティとして、セルロース膜とクモの糸を混ぜるというわかりやすいものがあったので、評価しやすかったと思います。
また、昨年までのiGEMに特化した実験をやりまくる形ではなく、ストーリーに沿った実験を行った点も評価しやすさをあげたと思います。 (パーツに関する実験は、例年よりは少ない。それでも他のチームよりは多い。basic 8個
- composite 3個 + 実験データなし4個)
2020年以降のiGEMで評価されるプロジェクトを理解し、それに適応して、圧倒的に優勝したプロジェクトでした。
iGEM 2022 LINKS_China
概要
UV-PRISMA: UltraViolet radiation Protection and skin Repairing by Innovative Sunscreen with Mycosporine-like Amino acids 紫外線は私たちの皮膚にダメージを与え、日焼け、炎症、皮膚の老化を引き起こします。 マイコスポリン様アミノ酸 (MAA) は、シアノバクテリアや藻類などのさまざまな海洋生物によって生成される天然産物であり、紫外線を吸収することができます。 しかし、MAA の生成率が低いため、MAA を日焼け止め成分として商品化する可能性は限られています。 今年、LINKS_China は、Saccharomyces cerevisiae を操作して 3 つの MAA (シノリン、ポルフィラ-334、パリチン) と、もう 1 つの UV 吸収分子であるガドゥソールを生成させました。 我々は、Nostoc punctiforme、Nostoc linckia、および Actinosynnema mirum からの酵素を組み込んで最適な経路を構築し、収量を増加させるためにキシロース代謝経路を導入しました。 これらの酵母製品は紫外線を吸収することに成功し、ほとんどの UVA および UVB 光線をカバーします。 皮膚の修復のために、皮膚で生成される反応性酸化種を除去するためにスーパーオキシドジスムターゼとカタラーゼを導入しました。 当社の MAA ベースの日焼け止め製品である UV-PRISMA は、より健康的で、より優しく、より環境に優しい方法の UV 保護を実現します。(Google 翻訳)
背景 & スケジュール
元々二つのチームだった。中国全土から集まった 47 人。
1 つは酵母の代謝工学を行って天然の日焼け止め物質と抗酸化物質の生成を試み、もう 1 つは傷の回復と皮膚の修復のための酵素の製造を試みていました。 しかし、私たちはその後、保護特性と皮膚修復特性の両方を備えた日焼け止め成分を製造するという目標に向けて、完全に統合して大規模なチームを形成できることに気づきました。
例年同様のスケジュール。2 月に冬季授業、ブレスト開始。3 月からプロジェクトスタート。4 月からラボスタート。6 月から本実験。( @ LINKS Lab )
※ ただし、COVID-19 の影響はあって、何度かプロジェクトが中断したらしいです。
やったこと
主にやったことは、次のことです。
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✓ 1. 4 種類のマイコスポリン様アミノ酸 (MAA)を酵母で生産・最適化
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✓ 2. ROS (Reactive Oxygen Species)の分解
MAAの前駆体となるS7Pと4DGの生産量の増加 → 成功
酵母での生産のために代謝工学を適用し、収量を向上した。 いくつかの代謝関連の酵素を抜いたり加えたり編集したりして 3 つの株を作成した。 それらを異なる培地で培養し、成長速度を比較した。野生型と遜色ない速度で成長する培地条件を決定した。
2種類のMAA (Shinorine と Porphyra-334)の生産 → 成功
自然界には、いくつのか異種由来の酵素があるため、それらを組み合わせて、MAAを生産する経路を検証した。
これらの組み合わせに対して、光をあてて波長の吸収率等を比較した。高速液体クロマトグラフィー (HPLC) および質量分析 (MS)で、生産物の測定も実施した。
その後、さまざまな最適化 (遺伝子やプロモーターを最適化した) を行い、生産の安定化と、高収率化を実現した。
2種類のMAA (Palythine と Gadusol)の生産 → 成功
ROS (Reactive Oxygen Species)の分解 → 成功
結果
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Medal : Gold
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Best : New Basic Part, Part Collection
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Nomination : Wiki, Sustainable Development Impact, New Composite part
感想
2021年のテーマ同様に、環境問題に切り込んだテーマでした。しかし、優勝はおろか、Top10にすら入れませんでした。Wikiも、前年同様読みやすい構成でした。 しかし、この年から導入されたWikiのルール変更により、ライバルたちのような圧倒的な美しさを持つ、Wikiではありませんでした。
また、この年は、オンラインとオンサイトのハイブリッドで行われました。(LINKS-China はオンライン) オンサイトで参加した体感としては、オンサイトのチームの評価の方が圧倒的に良かったです。 (ラグがない、臨場感が伝わることによる、スムーズなコミュニケーションが実現。)そのような中、プレゼンも、全チームが、リアルタイムで行う形式だったので、差が拡大しました。 ※2023 年からは全チームビデオになりました。
また、この年の高校生年代では、Silver Medal のチームが、Top10 に入っているなど、Medal や Sepecial Prize と、全体の評価が別物であることを、再認識させるものでした。 (QAなども見ましたが、Judgeが辛すぎると思います。Judgeの割り当てで相性がよくなかったことは否めません。さすがに、Top10に入れないのは、いじめすぎです。)
内容は、パーツ 30 種類、酵母で 4 種類の MAA 分子の生産、大腸菌で 10 種類以上の酵素の生産。47人いて、LINKSクオリティの実験量でした。 主に、4 種類の MAA 分子の生産を最適化するために、ゲノムをいじりまくっていました。その改善のサイクルの数は、5回以上あるようにみえ、かなり最適化を頑張っている印象です。 しかし、この大変さは、審査員が理解できていない気がします。 あと、先行研究があるぽいので、オリジナリティをアピールしにくかったのかもしれません。
(実用化に向けては、このような最適化を行う過程が重要だと思います。なので、私は、良いプロジェクトの一つだと思います。)
2022 年には、Wiki のルールの大幅なルール変更がありました これまで 2000 年代から継続されてきた、MediaWiki による Wiki システムから、Gitlab Community Ediction ベースのシステムに移行しました。 これまで、iGEM は、セルフホストできるシステムでの永続的なホストを望んでおり、MediaWiki に変わる有力な代替案がなかったのも確かです。 しかし、2020 年ごろからの体制変更により、iGEM HQ にデザインチームが設置され、iGEM のデザインや Web システムをすこしずつ改善が繰り返されてきました。 さらに、Gitlab の台頭も相まって、MediaWiki からの移行が、ついに実現されました。 これにより、Wiki のデザインの制約がほぼなくなり、現代のフレームワークを思う存分使用できるようになりました。 (良いチームのコア部分のコードをフォークしてきて、手元で簡単に改変できるのに、0 から作って、スタイルが爆死しているチームがたくさんいるのは、なぜでしょう...?)
iGEM 2023 LINKS_China
概要
Aroma Anchor アンバーグリスとサンダルウッド オイルはどちらも何世紀も前からよく知られた芳香固定剤です。 しかし、人々は竜涎香を得るためにマッコウクジラを狩って殺し、白檀の栽培には多大な時間と費用がかかります。 LINKS-China 2023 は、酵母細胞工場を使用して固定剤の主要成分であるアンブレインとサンタロールを生産することを目的としています。 S.cerevisiae を操作することにより、tHMG1 と IDI1 を過剰発現させることで MVA 経路を最適化しました。 次に、ClSS とその変異体を発現させてサンタレン生成経路を構築した。 その後、CYP736A167 と SaCPR2 を挿入してサンタレンをサンタロールに変換しました。 また、2 つの異なる組み込みを挿入することにより、アンブレインを生成する経路を構築しました。 最終的に、酵母は 24.23 mg/L のサンタレンと 40.65 mg/L のサンタロールを生産することができ、アンブレイン生産に最適な統合を発見しました。 私たちはプロジェクトの将来の開発を計画するために市場分析を書きました。 将来的には、LINKS-China が経済的で高品質な芳香固定剤を社会に提供できるようになるものと期待しています。
背景 & スケジュール
リーダーは、15 歳でした。とても若いチームでした。
例年同様のスケジュール。2 月に冬季授業、ブレスト開始。3 月からプロジェクトスタート。4 月からラボスタート。6 月から本実験。( @ LINKS Lab )
やったこと
主にやったことは、次のことです。
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✓ 1. Construction of terpenoids producing strain
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✓ 2. Construction of Santalene Production
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✓ 3. Construction Santalol Production
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✓ 4. Construction of Ambrein Production
Santalene 生産 → 成功
酵母を遺伝子編集し、サンタレン合成酵素(FPP → Santalene)を導入し、確認しました。(10種類程度作成して、そのうち2つで比較)
Santalol 生産 → 成功
酵母を遺伝子編集し、CYP (シトクロム P450 酵素)の内、CYP736A167 と SaCPR2 (Santalene → Santalol)を導入し、確認しました。
Ambrein 生産 → 失敗
酵母を遺伝子編集し、3つの遺伝子 (BmeTC_Y167A、D373C、BmeTC) (Squalene → Ambrein)を導入し、確認しましたが、Ambreinは確認できませんでした。 先行研究では、Cell-freeで確認されていました。
結果
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Medal : Gold?
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Best : ?
-
Nomination : ?
感想
プロジェクトの方向性自体は、2022 年までと同様な気がします。しかし、質が大幅に低下したように感じます。 それは、Wiki のページが PDF の直ばりであったり、画像が間に合っていないことからもわかります。 (実験量と質は、人数比で見ると、そこまで落ちていない気はします。)
また、先行研究についてしっかり書かれている分、それをトレースしただけのように感じてしまいます。 オリジナリティをどこに出せているかを、明確に主張したいと感じました。
プロジェクトの内容自体は、合成生物学の主要な産業分野であると考えられている、香料の生産に取り組んでいます。そのような製品として展開できる可能性ものをテーマにしているところは、さすがだと思います。 しかし、iGEMプロジェクトの発表の質の低下をみると、主要サポートチームが、現在のストーリーや見た目重視なiGEMに、力をいれるのをやめている可能性すら感じました。
終わりに
本記事では、Boxiang Wang さんを中心とした iGEM チームのエコシステムをざっくりと紹介しました。 彼らの活動は、中国に強い iGEM コミュニティが根付いた一つ要因だと思います。 多くの活動の選択肢の中で iGEM に参加を決める若い才能が存在することは、iGEM コミュニティにとって大きな利益となります。
このような環境を整えるために尽力してくださっている方々に、心から感謝の意を表します。
コラム
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Boxiang Wang さんは、iGEM 2017 に、初めて (?) PI として参加します。この時、一緒に参加したのが、現在 iGEM Foundation の Top5 の一人である、Dorothy Zhang さんです。 彼女は、この iGEM 2017 BGIC-Union チームの Secondary PI として、この時初めて、iGEM のエコシステムに参加しました。 Dorothy Zhang's Journy
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Bluepha は、IGEMer 二人が創業。2018 年にキャッシュアウトしそうだった。なのに、iGEM 2018 出場をサポートしていた !? Bluepha 創業秘話
- The dissolution of iGEM Japan Community, The Next...igem2023-12-25
- iGEMを始める前の準備igem2023-12-23
- なぜ日本は20年間もGrand Prizeを取れなかったのかigem2023-11-07
- iGEM 高校生年代で最強を誇る LINKS-Chinaとは (2018, 19, 21優勝)igem2023-10-20
- iGEM 合成生物学 Advent Calendar まとめigem2023-12-25
- iGEMer Interview まとめigem2023-10-09
- iGEM Jugding Handbook 2023 要点igem2023-09-16
- iGEMの現状と次なる目標 (2022年)igem2023-03-04
- iGEM Ambassadorから見たiGEM2020igem2022-11-29
- iGEMのチーム登録費用は高いかigem2022-11-28
- iGEMについての基礎知識編 [2019]igem2022-11-27
- iGEMのCriteriaについて [2019]igem2022-11-27
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